相続を争続にしない方法等
c−02. 遺言のすすめとその効果

私には、子供が多く、なかには事業で失敗したり消費癖のある者もいて、私に万が一のことがあった時の財産争いが心配です。遺言にはどんな方法があるのでしょうか。


- @ 遺言の仕方は一般的には、3つの方法があります
- イ.自筆証書遺言
遺言をする人が自分で「全文」「日付」「氏名」を自筆し、捺印します。
ロ.公正証書遺言
公証人役場で公証人によって作成してもらいます。費用がかかりますが、最も安全で確実な方式といわれています。2名以上の「証人」が必要です。
ハ.秘密証書遺言
遺言の内容を秘密にしておけます。遺言者が自分で作成した遺言書に署名捺印の上封印して、これを公証人と証人2名以上の前に提出し、公証人に遺言書であることを申述し証明してもらいます。 - A 自筆証書遺言と公正証書遺言の長所と短所
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自 筆 証 書 公 正 証 書 長所 ・簡便
・費用は一切かからない
・自分1人で作成できる
・遺言を書いたことを秘密にできる
※遺言の全文、日付、氏名の自署と捺印が必要・紛失のおそれがない(原本が公証人によって保管される)
・変造のおそれがない
・遺言の存在、文意解釈等についての争いの余地がない
・家庭裁判所による「検認」手続不要
・全国の公証役場で検索が可能短所 ・紛失のおそれ
・隠匿、変造のおそれ
・文意不明、形式不備による無効のおそれ
・検認手続が必要・若干費用がかかる - B 遺言を書く時期は心身共に健全な時にする
- イ.遺言者が内容的に一番良い遺言を書けるのは、心身共に健全な時です。病気の場合は医師の証明があっても公証人に拒否される場合があります。また、仮に病床で遺言を作成しても、その有効性を裁判で争っているケースが増えています。
ロ.病気で入院すると完全介護となり何も身の回りのことを考える必要がなくなり、数か月で痴呆症になるケースもある。自分の名前が書けなくなるともうダメ。 - C ひどい難聴はダメ、ただし民法改正で条件付きで公正証書遺言および秘密証書遺言の作成も可能
- 遺言者がひどい難聴の場合は、公証人が公正証書遺言の内容を本人に言い聞かせ、確認をとることが困難なため、以前は原則遺言は成立しませんが、平成12年1月8日からは手話通訳人の通訳または筆談により可能になりました。
- D 平成22年4月1日から遺言で生命保険の受取人の変更が可能になった
- イ.以前は、保険証券の保険金受取人をAのままにしておいて、遺言書で保険金受取人をAからBに変更しても、保険金請求権はAにありBが受取ることは法律上は認められていませんでした。
ロ.今は、保険法の改正により遺言書による受取人の変更ができるようになりましたが、実務上は死亡後直ちに保険会社に連絡をして、変更後の保険金受取人が受取れるように手続きを取る必要があります。
ハ.なぜなら、連絡のある前に保険証券で指定された保険金受取人からその請求があれば保険会社は支払い義務があるからです。支払後に遺言により変更された受取人からの請求があっても重複して支払ってはくれません。
ニ.従って、トラブルを避けるためにも生前に契約者自身が受取人の変更手続きを行っておく方が安心です。 - E 遺留分に注意して、遺産を特定する分割方法が良い
- 遺留分を侵すと、後日相続人から「遺留分の減殺請求」がある場合もあります。また、遺贈は総額の何分の1の共有とするよりも、個々の財産ごとに受遺者を決める方が具体的でベターでしょう。
- F 遺留分の減殺請求権とは
- イ.「遺留分」とは、妻や子供、直系尊属は遺言書の内容に関わらず、一定の範囲で最低限の相続分が保証される制度です。遺留分を侵害された人は、遺留分を侵害した人に対して、「遺留分減殺請求」、すなわち遺留分に相当する財産を渡せという請求が出来ます。この請求は、相手方に対して書面で行います。重要な書面ですから、配達証明付きの内容証明郵便で行います。
ロ.減殺請求を受けた側は、遺留分を侵害した部分についての遺贈または贈与が無効になるため、その部分については直ちに返還する旨の意志表示をする必要があります。意思表示をしなければ当然に争いになります。(最判 昭35.7.19 民集14・9・1779) - G 遺贈を受けた財産に対する相続税はどうするか
- イ.不動産で遺贈を受けても、自己資金がない限り、相続税は払えなくなるので、現金預金も相続させる配慮が必要です。
ロ.遺言書によっては、相続税の負担をどうするかまで記載されていないものも多く実務上使用できないケースもある。よって、前もって概算の相続税額を計算しておく必要がある。 - H 遺言は法定相続に優先する効力あり
- きちんとした遺言書を作ってさえあれば、相続争いは未然に防げたのにというケースが少なくありません。相続人の多くは、被相続人が一生考えた末の遺志を尊重する気持ちがあるものです。
- I 遺言に代わる「死因贈与契約」
- イ.「死因贈与契約」とは、例えば「甲が死亡したときにA土地を乙に贈与する」というように、贈与する人の死亡を期限の到来として贈与の効力が生ずる契約です。生前贈与と同じく、死因贈与も契約ですから、両当事者の合意が必要で、合意の内容を契約書として作成して行います。
ロ.税法上は遺贈と同じく、贈与税ではなく相続税の課税対象になります。これは法律上は、単独行為と契約とは違いますが、死亡を原因として遺産を取得する点で実質的差異はないからです。
