相続対策の基本
a−14. 生前贈与を積極的に活用する方法

生前贈与は、相続対策として相続財産を次世代に継承させるのに有効な手段ですが、利用する際の注意点とポイントは何ですか。


- @ 生前贈与の目的
- 生前贈与は、次の3つのうちどれかその目的を明確にした上で、贈与する相手を誰にいつ何を贈与するのかを決める必要がある。
- イ.相続税対策として現預金を減少させるのであれば、孫や子供の配偶者に対し盆や暮に封(100万円)のまま手渡す。相続人に対しては年間300万以内(贈与税19万円)で早くはじめて長く続ける。
- ロ.納税資金対策として相続人に対して、贈与税と相続税の税率を比較検討して税率が同じになる限度金額まで贈与する。
- ハ.資金援助対策として相続人やその家族に対し生活資金を援助し、将来仏様として大切にしてもらうために贈与する。
- A 現預金を贈与する場合は、明確な証拠を残すこと
- イ.生前贈与の注意点は、贈与があったことを課税庁に対してどう立証できるかです。
- ロ.現金を贈与した場合に、受贈者の預金通帳や届出印鑑などを、贈与者が保管し管理していたら、贈与の事実を証明することはできない。
- ハ.定期積金は、当初から毎月の積立額と積立総額が決まっているので、贈与者が積立の資金を出していれば、積立満期額に一括して贈与税が課税される。
- B 証拠を残す方法
- イ.手渡しではなく、贈与者の銀行口座から、受贈者の銀行口座へ振り込む。
- ロ.受贈者が自己名義の預金口座を作る際には、口座開設申込みは必ず本人又はその親が自署押印する。
- ハ.受贈者又はその親権者が通帳・印鑑・証書などを保管し、届出印鑑は必ず贈与者のものとは区別しておく。
- ニ.通常の暦年贈与で、110万円超の贈与は必ず申告し贈与税を納付すること。
- ホ.贈与する際には、その都度贈与契約書を作成する。
- C 不動産を贈与する場合は、時価が相続税評価額より大きい財産の贈与を優先し、収益物件を贈与する
- イ.贈与財産の評価額は、「時価」ではなく「相続税評価額」によるので、時価よりも相続税評価額が低い財産ほど、生前に贈与すると効果が大きい。
- ロ.将来値上がりの可能性のある土地、例えば調整区域から市街化区域に変わる可能性がある土地や区画整理や開発計画により時価が上昇すると思われる土地等の贈与はより効果がある。
- D 生前贈与加算との関係
- イ.相続人等が相続開始前3年以内に受けた贈与については、贈与時点での評価額で課税されるので、財産価値が上昇している場合には、有利になる。
- ロ.利回りがよく高い収益を生む資産を贈与すると、早くから収益が受贈者のものになり納税資金の確保につながり相続対策になる。
- ハ.但し、不動産等を贈与する場合には、登記費用や登録免許税・不動産取得税がかかることに注意。
- E 贈与に対する課税庁の更正・決定の期限が、通常の場合はすべて6年、仮装・隠蔽の場合は7年になっているので、相続税の申告に際して過去の贈与の事実関係を把握する必要がある。
