個人の不動産取引と税務
a−23. 個人の不動産を同族法人に売却する場合の注意点

個人の不動産を同族法人に売却する場合の注意すべき点について教えて下さい。


- @ 不動産を同族間で譲渡して節税する
- (1)相続税は、超過累進税率が適用され、最高税率は55%です。
よって、多くの地主さんは、何かしらの方法で財産を分散させて、相続税を少なくしようと努力します。所得税も増税となれば、個人収入を法人収入へ移行する傾向が強くなってきます。 - (2)そこで不動産を法人の所有にしようとする納税者も増えてくるでしょう。たとえば、家族が社長になっている不動産管理会社の中には、単なる管理にとどまらず、オーナー本人から土地建物を買い受けて不動産賃貸業を行っているところもあります。その際に税務上で問題となるのが、土地の譲渡価額です。
- A 個人から法人に譲渡するときの注意点
- (1)建物については、すでに減価償却費を毎年必要経費に計上しているため、譲渡価額も安く設定でき、売却益が生じることはほとんどありませんが、土地については、先祖代々から引き継いでいる土地の取得価額は売値の5%となり、多額の売却益が発生します。したがって、「売値が高すぎる」「安すぎる」という税務上の問題がしばしば発生するのです。
- (2)同族関係者であれば、一般的に売主側も買主側も売買価額を低く設定しがちですが、税務署側はあくまでも適正時価での売買を求めます。
- (3)仮に個人から法人に対して、時価の2分の1未満の対価で譲渡したとしても、時価により譲渡があったものとみなされ、譲渡税が課税されます(これを「みなし譲渡」と言います)。
- (4)一方、時価の2分の1以上で譲渡すれば時価課税は免れることになりますが、譲渡の相手が同族会社であれば「同族会社の行為計算の否認」により、時価で課税されることがあります。この場合、法人の側は譲渡者から時価で取得したこととなり、実際の取引額との差額が受贈益として課税対象になります。
- B 会社が役員より安く買った場合
- (1)役員が時価の2分の1未満で会社に土地を譲渡したら、実際の譲渡価額にかかわらず、時価で譲渡したものとして、譲渡所得税が課税されます。
- (2)会社が低額で購入したら、適正な時価との差額については、法人の所得金額の計算上益金の額に算入され、土地の取得価額は、この差額を加えた金額になります。
(土地) ××× (受贈益) ××× - C 会社が役員より高く買った場合
- (1)役員側は、適正な時価を超えた分については、役員賞与となり給与所得として課税されます。
- (2)会社側は、適正な時価を超えた分については、役員賞与となり、損金には算入されません。
(役員賞与) ××× (現金預金) ××× - D 判例の考え方を確認して適正時価を算出しましょう
- (1)同族会社の行為計算が経済的、実質的にみて、経済人の行為として、不自然・不合理なものと認められるか否かにより判断されます。
- (2)通常、不動産売買における価格の決定は、利害関係を共通しない経済人の間では、近隣の売買価額や公示価額を参考にするのが普通です。
