個人の不動産取引と税務
a−4. 一つの譲渡契約を2年に分けて申告できますか?

甲は平成24年6月に丙に貸付けてある土地を更地にして、乙に1億円で売却する契約をしましたが、丙の立退きは来年になりそうです。そこで、甲は平成24年分は底地部分のみを4千万円で譲渡し、貸地部分は平成25年分として申告してもいいですか。


- @ 所得税法第36条第1項の意味
- (1) 第36条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする。
- (2) 「収入すべき金額」とは、現実に収入された金額をいうのではなく、収入すべき権利が確定したものをいい、収入金額の確定の時期は、その資産の所有権が相手方に移転する時とされています。
- (3) 通常の場合は、譲渡代金の決済をすると同時に所有権移転登記に必要な書類等の交付を受けますから、その当日になります。
- A 民法176条の考え方は売買契約日
- (1) 第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
- (2) 民法では、登記や引渡しは要せず、特約がない限り売買契約締結のときに所有権が移転するものと解されています。
- B 但し、税務上は原則として引渡日
- 課税実務では、資産の引渡しの日を譲渡所得の実現の時としてとらえ、納税者の選択により、「契約の効力の発生の日」により総収入金額に算入して申告したときはこれを認めることとしています。
- C 一つの契約による譲渡については、原則として土地の引渡しが行われた年分の所得になる
- (1) 一つの契約に基づく譲渡所得は、契約ベース又は引渡しベースのいずれかによります。
- (2) この事例の場合は、譲渡所得の計算に必要な数値の一つである借地権部分の取得価額(立退料)が未確定に付、土地の引渡しが行われた年分の所得とすべきです。
- (3) 上記Bの考え方は、一つの契約による譲渡資産を分割し、その一部を引渡しベースで、他の一部を契約ベースで申告することまで認めているものではありません。
