相続相談センター│木村金蔵税理士事務所−東京都台東区上野にある、相続・贈与・譲渡の税理士・会計事務所
 
 

木村金藏税理士事務所
代表 税理士 木村 金藏

昭和46年に上野で税理士事務所を開業し、税理士として時には経営者として、さまざまなことを学んできました。

実践で培った600超の事例から、財産を守る相続対策を提唱しています。「相続税対策」「土地有効活用・賃貸住宅経営」セミナーの講演を、全国で年50回以上実施しています。

何とぞ宜しくお願い申し上げます。

<所在地>
〒110-0015
東京都台東区東上野1-13-7 第二横井ビル3階
TEL 03-3831-7252
FAX 03-3831-6213
E-Mail info@kinzou.com

<WEBサイト>
・ オフィシャルサイト
   http://www.kinzou.com

・ 相続相談センター
   http://www.souzoku-center.com

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   http://www.yayoi-center.com

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延納と物納

d−3. 物納制度の最新版

物納制度について教えてください。

1.物納に対する生前対策
@ 生前測量が必要
境界の確認のためには、測量や地積更正は大切で、それに要した費用は生前に相続財産を減少させる効果があります。よって、これらの作業は、生前にやっておくべきでしょう。
A 生前にしておくべき事項
イ.隣接地主との境界を確定させる
ロ.土地の測量図の整理と実測図により地積更正登記をする
ハ.貸宅地についての借地人を特定させる
ニ.正式な書式による貸地契約と適正地代への改訂契約をすすめる
ホ.借地権者へ底地を売却する
ヘ.等価交換により借地権者から貸地を返してもらう
ト.土地の有効活用を図る中で物納または売却予定地を確保する
チ.二次相続時の物納用地または売却用地を確保する
リ.物納が可能なように遺言と遺産分割の内容を検討する
B 物納は収納されるまで手間と時間がかかりすぎる
イ.申請から収納に至るまでの手続きが複雑なために、税務署から要求される物納条件の整備に時間がかかりすぎます。特に複雑な権利関係がある場合は、その整理や抹消手続等のため、さらに手間と時間がかかります。
ロ.物納を許可する段階で、税務署側で書類が完全だと思っても、財務局から再度詳しい実測図の提出を求められ、測量図を2回も提出させられる場合もあります。
2.物納制度の概要
@ 審査期間の法定
物納申請書が提出された場合は、申請期限から3か月以内に許可または却下を行います。ただし、この3か月の審査期間には、提出書類の不備による物納申請者からの延長申請期間や、収納するために納税者が行う必要な措置(条件整備等)に係る期間は含まれません。
提出書類が完全なのに、この3か月の審査期間内に許可または却下をしない場合は、税務署長は物納許可したとみなします。
なお、申請財産の状況によっては、最長で9か月まで延長する場合があります。
A 手続等の明確化
管理処分不適格な財産の範囲が限定されるとともに、同じ種類の財産でも物納にあてる順位が劣後となる財産が定められています。また、財産ごとに必要な提出書類が明示されています。
B 物納手続関係書類の提出期限
納期限または納付すべき日までに物納申請書に物納手続関係書類を添付して提出しなければなりません。物納手続に必要な書類の記載に不備、あるいは必要な書類の提出がなかった場合には、20日以内に補正又は提出しなければ、物納申請をとり下げたものとみなされます。ただし、期限までに物納手続関係書類を提出出来ない場合は、届出により提出期限の延長(最長1年)が認められます。
C 延長届出書の種類
物納手続関係書類提出期限延長届出書
収納関係措置期限延長届出書
物納手続関係書類補完期限延長届出書
D 物納の再申請等
物納申請した財産が管理処分不適格と判断された場合には、従来求めていた財産の変更要求ではなく、物納申請が却下されますが、その却下された財産に代えて1回に限り、他の財産による物納の再申請を行うことが出来ます。
なお、延納により金銭で納付することを困難とする事由がないことを理由として、物納申請の却下があった場合に、物納から延納へ変更することが出来る場合があります。
E 条件付許可
汚染物質除去の履行義務などの条件を付されて物納の許可を受けた後に、許可財産に土壌汚染等の瑕疵があることが判明した場合は、汚染の除去等の措置を求められます。
なお、物納許可後5年以内に上記の措置を求められ、それが出来ない場合には、物納許可がとり消されるのでご注意ください。
F 利子税の納付
物納申請した場合には、物納財産を納付するまでの期間に応じ、一定の利子税の納付が必要です。ただし、税務署の手続に要する期間は利子税が免除されます。
G 物納申請書に添付して提出すべき物納手続関係書類(例:更地の場合)
物納申請期限までに物納申請書に添付して提出してください。
3.物納申請から収納までの流れ
@ 物納申請
共 通 土地の状況によって追加が必要なもの
更地
(借地権の設定がないもの)
所在地(住宅地図)、公図の写し、登記事項証明書(登記簿謄本)、地積測量図、境界確認書、道路敷境界明示書、土地の維持管理に要する費用の明細書、所有権移転に必要な書類の提出を約する旨の申出書
工作物等の越境物がある場合 工作物等の越境の是正に関する確約書
建築基準法第43条1項の道路に接していない場合 隣地を通行することを承諾した書類
電柱がある場合 電柱等に係る土地の使用承諾書の写し
仮換地の場合 仮換地指定通知書の写し
イ.申告期限内に「相続税物納申請書・物納手続関係書類一式」を添付の上、申請します。
ロ.ただし、その申請は金銭納付を困難とする事由があること、延納での分割納付が困難な場合に限られています。
ハ.「物納手続関係書類」については、土地、建物、立木、船舶、非上場株式、動産等の財産の種類ごとにそれぞれ必要となる提出書類が規定されていますが、土地と建物に関しては、物納申請したものの状況に応じてさらに詳細に規定されています。
A 提出書類の一例
イ.所在地(住宅地図)、公図の写し、登記事項証明書(登記簿謄本)
ロ.地積測量図、隣接地主との境界確認書、道路敷境界明示書(道路査定書)
ハ.分筆および合筆登記、実測図により地積更正、公図訂正後の書類
ニ.隣接地主の登記簿謄本および名簿一覧表
ホ.その他必要書類を提出する旨の確約書
B 形式審査
イ.税務署(国税局)から提出書類のチェックを受け、不足書類があればすみやかに提出するようにとの催促があります。
ロ.「物納不適当財産」が含まれていないかどうか、書類上での確認調査があります。
ハ.前向きに処理する方法で物納物件の適否の検討に入ります。
ニ.不適当財産があれば、却下の手続がとられます。
C 現地調査
イ.税務署または国税局から現地確認と調査があります。
ロ.物納申請物件によっては、その後に財務局からも現地の確認調査があります。
D 確認調査
イ.駐車場の空地化と、田畑の雑種地への地目変更登記完了の確認があります。
ロ.境界標の確認と空地を木の杭と鉄線で囲んであるか否かの確認があります。
ハ.確認後、ロ.の証明のために現況写真を提出します。
E 物納申請物件を次の3つに区分し、処理の円滑化を図っている
イ.税務署(国税局)で適当と認めるもの
ロ.税務署(国税局)で不適当と認めるもの
ハ.財務局の意見をきく必要のあるもの
F 収納許可
イ.収納価額は、原則として相続税の課税価額計算上の評価額によります。
ロ.「許可通知書」が到着すれば、同封されている「所有権移転登記承諾書」に必要事項を記入の上実印を押し、印鑑証明書を添付して返送します。
ハ.職権により所有権移転登記が完了し、収納されます。
G その他のポイント
イ.収納許可が下りるまでの収入は、全部地主のものであり家賃・地代・更新料は収納直前まではもらっても良いことになっています。
ロ.固定資産税の納付は、免税手続きを簡単にするため、全期前納よりも年4期の分割納付が得です。全額一括納付している場合は、還付手続が面倒になります。
ハ.不動産を物納申請した後の実際の業務は、ほとんどが測量士、土地家屋調査士の仕事ですが、税務署との窓口は税理士がならざるを得ないため、絶えずこれらの専門家と連絡を密にして早く処理を進めることが肝心です。
4.物納制度のフローチャート
5.物納管理処分不適格財産と物納劣後財産の不動産
@ 物納管理処分不適格財産は次の13種類
イ.担保権が設定されていることその他これに準ずる事情がある不動産
ロ.権利の帰属について争いがある不動産
ハ.境界が明らかでない土地
ニ.隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用が出来ないと見込まれる不動産
ホ.他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条の規定による通行権の内容が明確でないもの
ヘ.借地権の目的となっている土地で当該借地権を有する者が不明であること、その他これに類する事情があるもの
ト.他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含む)と社会通念上一体として利用されている不動産もしくは利用されるべき不動産または二以上の者の共有に属する不動産
チ.耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数)を経過している建物
リ.敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産(申請者において清算することを確認できる場合を除く)
ヌ.管理または処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
ル.公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
ヲ.引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産(イ.に掲げるものを除く)
ワ.地上権、永小作権、賃借権その他の使用および収益を目的とする権利が設定されている不動産で暴力団員等がその権利を有しているもの
A 物納劣後財産は次の13種類
イ.地上権、永小作権もしくは耕作を目的とする賃借権、地役権または入会権が設定されている土地
ロ.法令の規定に違反して建築された建物およびその敷地
ハ.土地区画整理法による土地区画整理事業等の施行に係る土地につき仮換地または一時利用地の指定がされていない土地(当該指定後において使用又は収益をすることが出来ない土地を含む)
ニ.現に納税義務者の居住の用または事業の用に供されている建物およびその敷地(当該納税義務者が当該建物およびその敷地について物納の許可を申請する場合を除く)
ホ.配偶者居住権の目的となっている建物およびその敷地
ヘ.劇場、工場、浴場その他の維持または管理に特殊技能を要する建物およびこれらの敷地
ト.建築基準法第43条第1項に規定する道路に2m以上接していない土地
チ.都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為をする場合において、当該開発行為が開発許可の基準に適合しないときにおける当該開発行為に係る土地
リ.都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することが出来るものを除く)
ヌ.農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地
ル.森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地
ヲ.法令の規定により建物の建築をすることが出来ない土地(建物の建築をすることが出来る面積が著しく狭くなる土地を含む)
ワ.過去に生じた事件または事故その他の事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産およびこれに隣接する不動産
6.金銭納付を困難とする理由のある場合のみ申請が受理
@ 物納の条件
物納申請は、現金納付に対する特例であり「延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の限度」において認められます。
A どうしようもない最後の最後が物納
したがって、物納申請者の相続税額から次の順序で納付可能額を差引き、最後に残った税額についてのみ物納申請が可能になります。
イ.相続人が相続した金銭等
ロ.相続人固有の金銭等
ハ.所得に応じて計算される年間の納税資金の20年間分の延納可能額
B 物納申請書と金銭納付を困難とする理由書をまず読む
イ.上記ロ.の内容を知らないまま最初から安易に「物納予定額」を決めてしまうことは、失敗を招く原因にもなりかねません。
ロ.分割協議が終わり、相続登記も完了し、いざ物納申請をしようと理由書を記入する段階になって初めて、最後の記入項目である物納の欄に達しないでその前の延納の項目の欄で終わってしまう事に気づき、大いに慌ててしまいます。
C 家庭の主婦はまったく問題なし
イ.土地だけを相続した人が一般主婦でまったく所得のない場合は、夫の源泉徴収票を添付することにより、配偶者控除の適用を受けていれば夫に扶養されていることが確認出来ます。
ロ.夫の事業の青色事業専従者になっていたり、他に勤務していて給与収入がある人の場合でも、その額が本人の生活費程度であり、しかも近い将来に土地譲渡等の臨時収入の見込みがなければ、物納申請はまったく問題はありません。
D 所得が多ければまず延納で
物納申請者が申請に際して経常的所得を示すために提出する確定申告書または源泉徴収票により、所得から借金、生活費、税金、保険料等を差し引き、その残りが仮に年間500万あったとすれば、その額が年間の納税可能資金とみなされ、20年の最高延納期間を乗じた1億円が延納可能額となります。
 [ 延納可能額 = 500万円 × 20年 = 1億円 ]
E 大金入る人の場合
近々入金見込みのある人は、延納による金銭納付が可能なため、それに見合う税額は物納申請の対象には入らなくなります。
イ.貸付金の回収がある
ロ.多額の退職金が入る
ハ.不動産を譲渡する見込みがある
F 退職金がゴッソリ入った人の場合
一流企業のサラリーマンで、退職金を3,000万円受取った人は、次の理由があれば、金銭納付を免れ物納申請は可能です。
イ.本人に子供が3〜4人いて、まだ1人も結婚していない
ロ.大学生もいて学費の負担がある
ハ.住宅ローンの返済が引き続き残っている
ニ.老後の生活費の確保が必要である
G 相続人固有の預金の残高証明までは不要だが理由書は上手に書く
以上のように、理由書の記入内容次第で金銭納付→延納→物納へと段階的に線引きがなされるため、物納を決めたらまず最初に理由書の内容とその記入方法をよく確認しておくことが大切です。
 

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