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個人の不動産取引と税務
a−28. 弁護士費用は譲渡費用になるか
10年前に一時使用を目的として土地を賃貸しましたが、いつの間にか建物を建てられ、5〜6年経過した今、契約違反を理由に土地の明渡しを求めましたが、結局は土地使用者に安く売却する事になりました。この解決のための弁護士費用は譲渡費用になりますか?
- @ 土地に対する紛争解決の方法として、結果的に売却になったとしても弁護士費用は譲渡費用にならない。
- A 大阪高裁昭和61年6月26日判決
- (1)控訴人は、当審において弁護士に対する報酬を、事件処理と売却に区分したと主張しているが、納税者の主観的区分で経費該当の存否が決せられるものではない。
- (2)本件は、各土地の占有あるいは境界をめぐっての紛争解決を目的として弁護士に委任したものであり、本件各土地は、この紛争解決に付随して合わせて売却されたもので、仮に右弁護士費用の中に本件土地の譲渡に関するものが含まれているとしてもそれは、右弁護士費用の一部にすぎず、かつ、その額を認定することができない。よって右区分された売却処分に対する報酬が譲渡費用に該当するとは解し難い。
- (3)右弁護士費用は、本件土地に対する報酬というよりは、本件土地に係る紛争の解決による一定の利益が納税者にもたらせれたことに対して支払われたものであって、いわゆる不動産仲介業者の仲介による手数料とは性質を異にするものである。
- B 譲渡代金回収のための弁護士費用も譲渡費用ではない
- 回収費用は、譲渡債権の回収に要した費用であって、資産そのものの譲渡に要した費用ではありません。
- C 神戸地裁平成2年1月31日判決で資産の維持管理費用とされた事例
- (1)Xが取得した土地の一部をAゴルフ場が不法占有し、ゴルフ場として造成しているとして、土地の明渡しを求め争った結果、控訴審である高等裁判所の和解勧告により、XがAゴルフ場に対し本件土地を1億2,500万円で売り渡し、訴訟費用及び弁護士費用として約2,000万円を譲渡費用として申告した。
- (2)本件弁護士費用及び訴訟費用は、一連の訴訟行為の遂行に要した実費及び委任事務処理に対する報酬と認められ、本件土地の譲渡のため直接要した費用とは認め難い。
- (3)控訴人は、本件弁護士費用、訴訟費用を所得税法33条3項の取得費に該当するというので、この点について検討するに、その取得後、所有権を保全、確保するために費用を支出したとしても、右資産の取得のための訴訟費用等には該当せず、その資産の維持、管理に要した費用となる。
- D 取得費になる場合の事例
- (1)不法占拠者がいる土地や家屋を購入し、その不法占拠者を立ち退かせるために明渡訴訟を行った場合の訴訟費用等。
- (2)所有権の帰属に争いのある資産について、その所有権を確保するために直接要した訴訟費用や和解費用等。
- (3)なお、この取得費とされる訴訟費用には、民事訴訟法等の規定による訴訟費用に限らず、弁護士報酬も含まれ、また、和解費用には、裁判上の和解に限らず、当事者間で和解が成立した場合に支払った和解金なども含まれます。
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